日時:2025年12月19日(金)19:00~20:00
場所:watage ※現地・オンラインのハイブリッド開催
主催:一般社団法人アーバニスト
※本レポートはキックオフイベントの概要です、研究助成事業の内容については「こちら」をご覧ください

第1部 イベント趣旨・アーバニスト研究助成の説明|中島直人

私たちは「アーバニスト」の発掘・再発見・育成・排出などミッションとして活動していまして、主な事業は京橋にある「シティラボ東京」という、環境と都市を掛け合わせた人材が交流する場の運営です。それ以外にも、いくつかの地域のお手伝いや、本日のような事業を行っています。

本日のイベントは、アーバニスト研究助成のキックオフという位置づけです。研究助成そのものについて簡単にご説明します。募集はすでに12月1日から始まっており、来年1月31日まで受け付けています。参加されている方の中には、すでに募集要項をご覧になっている方も多いかと思いますので、一部繰り返しになりますがご了承ください。

この研究助成の趣旨は、「アーバニスト」、つまり魅力的な都市をつくり出す人に着目し、その活動や関わり方を学術的に捉え、支援していくことにあります。ここでいうアーバニストは、特定の職能に限定されるものではありません。都市や地域に対して、実践的・創造的に関わり、結果として都市の魅力を生み出している人たちを広く指しています。

研究テーマとしては、国内外のアーバニストが都市や地域にどのように関わっているのか、どのようなリテラシーや実践を持っているのか、また、彼らが生み出す場所や活動、活躍する都市や地域の特徴、それらを育てる仕組みなど、幅広いものを想定しています。アーバニストを発掘し、応援していくための基盤となる学術的な蓄積をつくっていきたいと考えています。

「人」に着目した研究であるため、ご自身がアーバニスト的な活動をしている方が、その活動を素材として研究することも想定しています。この点は、一般的な研究助成とは少し異なる特徴かもしれません。

私たちは2021年に『アーバニスト』という書籍を刊行しました。成熟した都市を使い続ける時代において、都市を計画・設計する専門家と、生活者として都市に関わり、楽しみながら環境をつくっていく人たちが、近づき、越境し、混ざり合っていく存在としてアーバニストを捉えています。ただし、今回の研究助成は、その書籍で定義したアーバニスト像に限定されるものではありません。

採択は2月中を予定しており、研究期間は3月1日から開始します。助成額は1件あたり30万円で、3件程度を想定しています。審査は理事会メンバーが行い、学術的な妥当性に加えて、社会的意義も重視します。理事会メンバーは大学所属者だけでなく、実務家として都市に関わってきた人も多く、実践と研究の両面から判断する体制になっています。

応募資格としては、研究経験を有する方、あるいは大学院在籍者を主な対象としていますが、チームでの応募も可能です。その場合、代表者が条件を満たしていれば応募できます。研究成果については、ウェブサイトでの公開や、中間ワークショップ、シンポジウムへの参加、論文等でのクレジット表記などにご協力いただくことが条件となります。

募集期間は1月31日までです。年末年始を挟みますが、ぜひ積極的に応募してもらえればと思います。本日の参加者から今後ご一緒できる方が出てきたら嬉しいです。

それでは、最初のトークとして園田さんにお願いしたいと思います。

第2部 実務と現場から見たアーバニスト|園田聡

現在、大阪を拠点に、都市計画・都市デザインのコンサルタント事務所を共同代表として運営しています。行政がクライアントになることがほとんどですが、一部では鉄道会社など民間事業者と連携し、エリアマネジメントや駅前再生の支援にも関わっています。

私たちの仕事を一言で言うと、「パブリックライフ」をどう生み出すか、その伴走支援だと考えています。パブリックライフには、生活の中で必然的に行われる活動、余暇としての任意活動、人と人が関わる社会活動の三つがあると言われています。街の豊かさは、特に後者の二つがどれだけ生まれているかによって感じ取られます。そして、それらの受け皿となるのが、公共的な場所としてのパブリックスペースです。

現場では、自治体や民間事業者と一緒に仕事をしますが、実際にアイデアを出し、アクションを起こしているのは、地域に根ざした個人、いわばローカルなアーバニストと呼べる人たちです。豊田市や松本市、姫路市などでの事例を通じて、個人の思いや活動が街の風景やシーンを豊かにし、それが結果として地域の経済循環につながっていく様子を見てきました。

重要だと感じているのは、誰もが街に関われる「余白」をどうつくるかという点です。行政やデベロッパーだけが街をつくるのではなく、市民や事業者が関わる余地があることで、アーバニスト的な人が育ち、街が変わっていきます。

一方で、近年はパブリックスペースの活用が、にぎわいやイベントなど、いわゆる「キラキラした活用」に偏りがちだと感じることもあります。本来、公園や公共空間はセーフティネットとしての役割も持っているはずです。例えば、子どもが列に並ぶのが苦手だったり、少し大きな声を出してしまったりする場面があります。そうした時に、周囲の視線を気にして、結果的にその場所から人が離れてしまうことも起こります。

公園の環境を物理的に変えるだけでは、こうした問題は解決しません。大切なのは相互理解です。あの子はそういうことが少し苦手なんだよね、と共有できる関係性があること、何かが起きても排除せずに一緒にいられる空間をどうつくるかが問われています。そのためには、地域の保護者や関係者と対話を重ねながら、時間をかけて関係性を育てていく必要があります。

また、パブリックな活動の公共性や広域性をどう可視化するかも課題です。利用価値やアクティビティの多様性などに着目し、活動の変化を観測し、理論化・言語化していくことで、行政の意思決定や事業評価につなげていくことが重要と考えています。

今回の研究助成を通じて、こうした実務の現場と理論をつなぐ研究が生まれることを期待しています。

園田聡資料(抜粋)「アーバニスト研究のこれからを語る」

第3部 理論・研究の視点から見たアーバニスト|中島直人

私のほうからは、園田さんのお話を受けて、もう少し理論的・研究的な観点からアーバニストについて考えてみたいと思います。同じ都市デザインの立場ではありますが、やや理屈寄りの話になるかもしれません。

都市デザインというと、計画やデザイン、プロジェクト、制作、ガイダンスといったものを直接提供する専門家、いわゆる建築家や都市デザイナーを思い浮かべがちです。ただ、その定義に限ってしまうと、都市に関わる人は非常に狭くなってしまいます。実際には、自分自身では都市をデザインしているという認識がなくても、結果として心地よい都市づくりに関わっている人たちはたくさんいます。

例えば、エンジニア、測量士、デベロッパー、投資家、住民、行政職員、政治家、イベントの企画者、警察官や消防関係者など、都市のデザインに間接的・直接的に関わる人は非常に多様です。都市デザイナーと呼ばなくても、都市のあり方に影響を与えている存在は確実にいます。

ここで一つの整理として、「自己認識型」と「非自己認識型」という軸で考えることができます。自己認識型の都市デザイナーとは、自分は都市や空間をデザインしているという自覚を持ち、専門家として活動している人たちです。一方で、非自己認識型の人たちは、自分ではそう認識していなくても、結果的に都市の魅力や質をつくり出している人たちです。

さらにもう一つ、「一次的なデザイン」と「二次的なデザイン」という考え方があります。一次的なデザインとは、実際に空間や場所をつくる行為です。例えば、自宅を改修してカフェを始める人は、都市の中に新しい場を生み出していますが、本人は単にコーヒーが好きで、人が集まるのが楽しいという感覚かもしれません。それでも結果として、その人は都市の魅力をつくっています。

一方で、必ずしも自分で空間をつくらなくても、二次的なデザインとして都市に関わる人もいます。例えば、古い建物が好きで、それを撮影し、紹介し、面白さを共有する活動をしている人たちです。彼らは直接場所をつくってはいませんが、空間に価値を見出し、その運動を支え、広げています。こうした活動もまた、都市をデザインする行為の一部だと考えられます。

専門家としての都市デザイナーにとって重要なのは、自分でデザインすることだけではありません。こうした非自己認識型の人たちに影響を与え、活動を後押しし、ときには学びやきっかけを提供することも役割の一つです。少し大げさに言えば、教育や誘導、伴走といった行為も含めて、都市をつくっていく仕事だと捉えています。

研究事例①:過去の都市計画家の中にアーバニスト的人物を見出し、その経験、エッセンスを学ぶ研究

研究事例②:人びとはなぜ、自発的にまちづくりに取り組み始めるのか、その要因を他社からの影響の中に探った研究

研究事例③:自治体首長(市長)に「都市デザイナー」としての自覚と知識を教育する取り組みに関する研究 

これらの研究から、アーバニストは必ずしも専門家や自己認識を持つ主体に限られないことが分かります。そこで、自己認識型/非自己認識型、一次的デザイン/二次的デザインという整理が有効になります。

専門家や研究者の役割は、自ら設計することだけでなく、こうした実践を可視化し、概念化し、制度や計画につなげていくことにあると考えています。

中島直人資料「アーバニスト研究の展望と期待」

第4部 ディスカッション・質疑応答

ここからはディスカッションと質疑応答に移ります。オンラインからの質問は特にありませんでしたので、会場の方から質問を受け付けます。

参加者1(学生)
都市デザインという観点からお二人のお話を伺いました。都市デザイン的なアーバニストと、社会学的あるいは別の文脈で捉えられるアーバニストは、どう違うのか、あるいは違わないのか、その点をどう考えていらっしゃいますか。少し抽象的な質問かもしれませんが、お聞きしたいです。

園田
都市デザイン的なアーバニストという場合、空間を実際につくる、デザインするところまで含めて担う人が多いと思います。一方で、都市計画的、あるいは制度や仕組みの側から都市に関わるアーバニストもいます。例えば、直接空間を設計するのではなく、ルールメイキングや制度設計によって都市の環境を変えていく人たちです。
実際に、法律の改正や制度の見直しを通じて、都市のカルチャーや活動を守った事例もあります。そうした人たちは、空間をつくるというよりも、計画や仕組みをデザインするタイプのアーバニストと言えると思います。最終的に、その行為がどのような社会的なパターンや結果を生んでいるのかを見ることが重要だと考えています。

参加者2
私は社会学を専攻していて、都市に対してやや批判的な視点から見ることがあります。都市の価値が交換価値に寄っていくことで、良い側面もあれば、誰かを排除してしまう側面もあると思います。そうしたときに、アーバニストとして、あるいは都市に関わる立場としてどのような姿勢が望ましいのか、お考えを伺いたいです。

園田
観光やにぎわいが生まれることで経済的な価値が生じる一方、その影響で不便を被る人が出てくることは確かにあります。例えば、観光客が増えることで通勤・通学の人がバスに乗れなくなるといった問題です。その場合、観光によって生まれた税収や収益を、もう一度公共交通の増便などに再投資し、影響を受ける市民に還元していくことが重要だと思います。
誰が利益を受け、不利益を被っているのかを都市圏全体の視点で捉え、公平性を意識した意思決定を行うことが求められます。税の仕組みや財源の使い方を含めて、都市としてフェアな環境をどうつくるかが、アーバニストに問われると感じています。

中島
補足すると、アーバニストであることは、特別な肩書きを持つことではありません。そうしたマインドや姿勢を自覚していなくても、結果として都市に良い影響を与えている人は多くいます。それは学んで身につく場合もありますし、育った環境や経験の中で自然と形成される場合もあります。
重要なのは、自分がアーバニストだと名乗るかどうかではなく、都市に対してどう向き合い、どのような価値判断をしているかだと思います。

第5部|クロージング・今後の案内

本日はお時間をいただき、ありがとうございました。研究助成の説明とあわせて、実務と理論、それぞれの立場からアーバニストについて考える機会になったのではないかと思います。

改めて、アーバニスト研究助成の募集は1月31日まで受け付けています。本日のトークを聞いて、研究の切り口やテーマのヒントを得た方もいらっしゃるかもしれません。関心を持っていただけたら、ぜひ応募を検討していただければと思います。

研究助成は、完成された研究だけでなく、これから深めていきたいテーマや、実践と研究を往復しながら探究していくような内容も歓迎しています。研究期間中には、中間共有の場やシンポジウムなども予定していますので、研究者同士、あるいは実務家との交流の機会としても活用してもらえたらと思います。

本日の資料や募集要項については、アーバニストのウェブサイトに掲載しています。応募にあたって不明点があれば、メール等で気軽に問い合わせてください。

これで本日のイベントは終了となります。会場の方は登壇者や参加者同士で自由に交流していただければと思います。ありがとうございました。